@ 松江小学校の概要
松江小学校は、児童数414人(平成25年度)、教職員数は36人で、うち栄養教諭1人調理員4人で、自校方式の学校給食を実施しています。
学校周辺は、校区に図書館・市民文化会館等の公共施設があり、住宅地域です。また、大型スーパーやコンビニに囲まれた環境の中で外食産業や加工食品が気楽に利用されています。家庭や生活の変化に伴い、朝食を食べない児童や夕食を家族で一緒に食べない児童など食生活に課題がある児童もいます。給食においては、学級での残食は少ないのですが、個々には野菜が苦手な児童もいます。
A 食に関する指導の目標と食育推進体制の整備
本校では、前記の実態から、食に関する指導を通して「仲間とともに活動するなかで、責任感や自主性、相手を思いやる気持ちを育て助け合おうとする。」「食を通して、家族や地域の人々をはじめ、生産・流通・調理に関わる多くの人々の思いや努力を知り、共感し感謝の気持ちを持つ。」「自然環境を大切にしようとする心、命をいただくという心を持つ。」ことを目指し、健康を考えた望ましい食習慣を身に付けるとともに、安全で安心なものを選択して調理することができる力をつけられるよう取り組んできました。
食育を推進するに当たって、校長が職員会議や研修会の中で学校教育目標に基づく学校経営改革方針を出し、その中に食育で培う健康増進の方針を提示します。栄養教諭は校内運営組織で中心になる研修部に属し、研修の企画・立案に関わります。また、年度初めに全学級担任の学級経営や食育等の年間計画をまとめた「学校教育運営計画」を作成し、全職員で確認して共通理解を図ります。また校長は、地域食材や地場産業の学習内容に対応する情報を収集して栄養教諭と共に教職員につなげたり、児童・保護者・地域等に、食に関する意識を高め、理解と協力を求めたりして、職員のモチベーションを高め、資質能力が最大限に発揮できるよう教育環境を整えながら、教職員と共に実践を図ります。その中で、栄養教諭は、地域の生産者や流通、食肉検査等に関わる人との連携を図り、教科担任や学級担任と綿密な打合せを行い、給食の時間や教科等の中でその専門性を生かし、指導を行っています。
B 地場産物を活用した取組
(食に関する指導の目標(観点)【社会性】【感謝の心】)
松阪市の主な地場産物は、「モロヘイヤ」「なばな」「松阪茶」「松阪肉」「松阪赤菜」「松阪しめじ」「はたけしめじ」「しいたけ」等があります。
本校では、学校給食で使用する野菜を「松阪農場公園ベルファーム」の「農家市場」から購入しているため、季節の野菜は地場産物を多く使用することができます。毎日の給食放送で地場産物の紹介をしたり、生産農家の様子を写真等で紹介したり、給食時間や教科等の学習にゲストティチャーとして招いて話を聞いたりする活動を行っています。ベルファームや生産者との調整は栄養教諭が中心となって行います。
|
|
給食で使用する「そらまめ」「みえんどう」は、2年生の生活科で、栄養教諭がいろいろな豆がとれること、「さや」の中に実である「まめ」が入っていることなどを指導し、生産農家の方にも直接話を聞き、実際にさやとりをした後、給食で全校児童が味わいます。
また3年生では、「わたしたちの町の宝物を見つけよう、調べよう」(総合的な学習の時間を通じた実践)で、平成20年度より毎年「松阪肉」を取り上げ、生産者の思いに触れる学習を行っています。生産者からは、一頭一頭エサの配分を考えたり、健康管理に気をつけたり、
大切に愛情をこめて育てていることについて話を聞く機会を設けています。
三重県松阪食肉衛生検査所の獣医さんからは、松阪牛を安心・安全な食肉として提供するために検査を行い、努力していることを学んでいます。
さらに、社会見学では給食の肉の納入店で枝肉から精肉になる解体作業も見学し、精肉店の仕事や小売りの様子も学習をしています。
これらの学習を通じて、肉を食べるということは牛の命を栄養としていただいていることや、
自分たちが口にするまでに様々な人が関わっていることを学んでいきます。
|
|
|
松阪牛の枝肉からの解体作業(社会見学) |
給食で提供している牛肉料理についても、栄養教諭とともに、肉の栄養、松阪肉の特徴、牛肉と一緒に食べるとよい食材(食物繊維の多い野菜)等について学習を行なっています。その際、市内の松阪肉料理店で松阪肉とともに出される「松阪赤菜」についても学習をしています。給食の献立では、「松阪肉の肉じゃが」にあわせて「松阪赤菜のごま和え」を取り入れ、松阪赤菜生産者から松阪赤菜に対する思い、特徴等について話を聞いています。
また栄養教諭、給食室での松阪赤菜の調理方法、調理室内の様子を写真で見せながら説明をしています。その後、給食時間には生産者と一緒に松阪肉や松阪赤菜の味を楽しみながら会食してきました。
平成25年度は、5年生の総合的な学習の時間において、担任と栄養教諭が連携し、電子黒板を使用して松阪肉の納品の様子や調理方法等の映像を紹介し、給食調理員の松阪肉等を扱う調理の工夫や努力について紹介しました。また、給食調理員から直接話を聞いた後、児童は、生産から解体・流通・調理に携わる人々への感謝の気持ちを感想文にして、交流を深めることをしました。
C 教科等と連携した取組
(食に関する指導の目標(観点)【食事の重要性】【心身の健康】【食品を選択する能力】)
本校では、1年生から「3つのげんきっこ」(学級活動)として、食品を3つに色分けし、それぞれの食品の働きを学習しています。3年生では松阪肉の学習以外にも、国語科「すがたを変える大豆」の単元の発展学習としてより理解を深めるため、学年PTA行事として「豆腐作り」を行いました。このような調理体験は、食に関する学習のほかにも、宿泊学習等の様々な行事で取り入れ、児童の興味・関心を高め、食品に対する理解を深めるとともに、児童自らの実践力を高める大きな力となっています。
平成24年度から、5年生家庭科「元気な毎日と食べ物」の学習において、児童が毎日の食事や使われている食品に関心をもてるよう、日本の伝統食である「ご飯とみそ汁」づくりに挑戦しました。最近では、食生活の多様化から、ご飯とみそ汁が毎朝作られていない家庭も多い。日頃何気なく食べている「ご飯とみそ汁」の栄養やおいしさに気づき、積極的に朝食に取り入れていくことで、朝食内容の充実にもつなげることができると考えたのです。そこで本学習では、栄養教諭と専科担当がティームティーチング(複数の教師が協力しあって、学級の児童を教える授業のこと)で全時間に関わって指導を行いました。
本学習に入るに当たり、栄養教諭が給食の時間に、給食のみそ汁の「だし」の種類・とりかた・味噌の種類・実について説明し、児童の興味・関心を高めるようにしました。学習を通して、実の切り方や入れる順番を考えることや「だし」が必要であることを体験しました。
みそ汁の実習で出てきた気づきを踏まえ児童自らの創造性と興味・関心を高め広げること、家庭で家族とともに調理をすることで、家族とのきずなを強め、家庭における実践にもつなげました。児童が一人で調理できることを目標として、冬休みの課題で「わが家のオリジナルみそ汁」を考えさせ、発表もさせました。栄養教諭は、児童が考えたみそ汁の栄養バランスや食材について専門性を生かしてアドバイスを行い、2回目は児童が教師の力を借りなくても子どもどうし2人組中心で実習を進めることができるようにしました。