研修集録のはじめによせて
本年度は学習指導要領(平成20年告示)の全面実施の年でした。「生きる力の育成」を掲げ、知識の習得、活用する力、学習意欲を身に付けさせるため40年ぶりに総授業時間数と学習内容が増え、教科書が一新しました。基礎知識の習得・知識を活用する思考力や表現力、自ら学習に取り組む態度等が重要ということで、言語活動の充実や家庭と連携して学習習慣の確立にも配慮することが求められました。
本校では、3年前から移行期間を通じて「指導者の手から離れても、自分たちで学習や生活ができる子ども」をめざしました。各学年では、自分たちで考え、判断して行動する姿(凛とした姿)として具体的な姿を設定しました。そのような姿にするため手立てを考え実践し、その成果がこの紀要の各所に現れています。また、学習指導要領を先取りして7年ほど前から英語活動を取り入れてきました。これは、1年生から6年までということで全国的にも進んだ取り組みです。特にネイティブスピーカーのイアンさんやマリークさんに来てもらったことで、子どもたちは自然と外国の文化や言語にふれて力をつけました。修学旅行では外国の人に話しかけ、写真を一緒にとってもらう課題に児童が臆せずできたことにも着実な成長がみられます。その修学旅行で、平安神宮から清水寺までの間を子どもだけの班別行動をめざしました。そのため春から3回も校外学習で練習をしてきました。実際、体験学習をする所を調べたり、子どもの力だけで昼食を取る所を選んだり、自分たちで考え、判断して行動したりする姿がそこにはみえました。1年間の集大成である学習発表会では、5年生が6年生の発表を見て『一人一人が大きな声で、しかも英語の歌「カントリーロード」を自信満々で歌っていました。ぼくは英語が苦手です。だからこそ、6年生や年上の人たちはぼくの「あこがれ」なのです。』と子ども同士の学ぶ姿勢がありました。また、保護者からは『自ら学ぶ心豊かな子どもを育むの目標どうりに素晴らしい発表会でした。自ら考え、判断し、行動する「ここが見せ場だ! 松江っ子」。その名のとおりに感動する場面を見せてくれました。毎回、仕事で行けない私に子どもから「来て! 」の意味が見てわかり、「ちいちゃんのかげおくり」では涙が止まらず、しばらく動けない自分がありました。』『全学年の発表を見せて頂いて6年間の「成長」を感じさせて頂きました。1年生のかわいい姿を目にして、わが子のその頃を思い出し少し目頭が熱くなって・・・。(中略)インフルエンザ流行の中、短い期間でこれほどの内容を発表できた先生方と児童の皆のつながりをこれからも深めていって下さい。毎年子どもたちの「一生懸命な姿」に感動を頂いて嬉しく思います。』と温かい言葉をいただきました。改めて、保護者の方や地域の皆様と共に歩んできた1年を感謝の思いで振り返ることができました。
なお、三重県教育委員会研修分野の「学校の教育力向上支援事業」を受け、三重大学名誉教授の藤原和好先生や奈良女子大学の藤井康之先生を講師にお迎えし、授業研究を重ねて参りました。藤原先生が述べられるところの「教師が、子どもを変えようとする意識が強いと、教師や作品の価値観を子どもに押しつけてしまう、そうではなくて、もっと子どもを理解しよう、一人一人の子どもの本当のすがたを理解しよう、そしてそれを意味づけてやろう、それが教師の役割ではないか」「教師が、本当に真摯に子どもを見つめていれば、子どもの中にうごめいているもの、子どもの中に芽生えている可能性を見い出すことはできるはずです。それができるようになるのが教師の営みであり、成長であり、楽しみであり、教師であることの誇りであるのではないでしょうか」と述べられる中に、私たちの子どもを中心に据える教育の神髄を見い出しました。藤井先生は、「教師の仕事は、一人ひとりの学びを保障すること」を中心に、「生徒の内面を受容し、肯定的に聴くことによって、生徒をつなげていく」ことで、児童にとって安心できる「学び」が存在するという考えを述べられました。
本校では食育を始めとしてたくさんの活動や行事を行いました。その活動や行事を通して、子どもたちも大きく成長しました。私たちが今まで取り組んできた活動や行事・研修等で培ってきた「学力」「授業力」を更に高めるため、新しい時代に応じた「学力」「授業力」を中心にした研修も今後検討すべきと考えています。
最後になりましたが、本校教育に対し多くのご指導・ご支援をいただきました三重県教育委員会、講師として指導をしていただいた三重大学名誉教授の藤原和好先生、奈良女子大学の藤井康之先生や関係の方々に心からの感謝と御礼を申し上げます。
平成24年3月
松阪市立松江小学校長 松本 吉弘
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